テーマ4交流 みち・であい

32大王の棺

石でできた巨大なひつぎ。奈良県橿原市の()()丸山(まるやま)古墳で見つかった石棺を復元したものです。この石棺は第29代(きん)明天皇(めいてんのう)のものともいわれており、兵庫県の加古川下流域で産出される(たつ)山石(やまいし)を使って作られています。当時の天皇、大王は、石づくりの人々に竜山石を使った重たい石棺を作らせ、修羅(しゅら)とよばれるそりを使って陸を運ばせました。そして、瀬戸内海に出ると、船に積み換え、奈良まで運んでいったのでしょう。このような運搬を可能にするには、石棺を作り、修羅や船を用意するだけでなく、それを曳く綱づくり、引き手の管理、修羅が通る道作り、石棺を船に上げ下ろしできる港づくり、など、実に多くの労力がかけられています。そして、大勢で石棺を運んでいく様子は、人々に大王の力を見せつける意味もあったことでしょう。

また、竜山石の石棺は、大王の棺としてだけでなく、地元播磨でも200基を超える数が見つかっています。さらに、東は滋賀県、西は山口県まで運ばれたことがわかっており、竜山石は石棺の一大ブランドであったといえます。

現在も高砂市(おう)(しこ)神社のご神体として残されているナゾの巨大石造物、(いしの)宝殿(ほうでん)はこのころの製作と考えられており、あちらこちらで行われていた当時の石作の一端を垣間見ることができます。