2.古代官道に関する調査研究

当館の開館時から実施している調査研究事業です。古代の兵庫県内には、北には山陰道、中程には山陽道、南には南海道の3路が、そしてその支路として美作道、但馬道が通っていました。これらの道には一定距離ごとに駅家がおかれ、馬を常備し、都と地方を結ぶ重要な交通、情報網として機能しました。

調査研究事業を行うにあたって、播磨の山陽道を主な対象とすることにしました。それは、播磨地域には、国内初の駅家遺構が確認された布勢駅家(たつの市)や、駅家として国内初の国指定史跡となった野磨駅家(上郡町)があり、全国的にも駅家研究の最先端地であったためです。そこで当館では、分布調査、地名調査、地割(字界)調査、地中レーダー探査、測量調査、さらには発掘調査も行い、その実態の解明について現在も調査、研究を行っています。

これまでの調査研究のうち、発掘調査歴は以下のとおりです。

1.第1期(平成19年度~21年度)

 

【古大内遺跡(賀古駅家:加古川市野口町)】
 山陽道側溝と駅家の進入路、駅家の礎石や門の礎石(唐居敷)、駅家の築地塀側溝の確認。
 古大内式軒瓦や設営時のものと思われる土器、鞴の羽口、鉄滓、白土などが出土。

 調査報告書Ⅰはこちら(奈良文化財研究所HP)

2.第2期(平成22年度~24年度)

 

【長坂寺遺跡(仮称邑美駅家:明石市魚住町)】
 駅家の築地塀側溝、瓦葺以前の掘立柱建物の確認。
 古大内式、北宿式、長坂寺式軒瓦などが出土。

 調査報告書Ⅱはこちら(奈良文化財研究所HP)

3.第3期(平成25年度~28年度)

 

【向山遺跡(邑智<大市>駅家:姫路市太市中)】
 山陽道側溝、駅家の築地塀側溝を確認
 駅家の礎石と思われる石材片のほか、長坂寺式軒瓦、土器などが出土。

 調査報告書Ⅲはこちら(奈良文化財研究所HP)

4.第4期(平成29年度~令和4年度)

 

【辻ヶ内遺跡(高田駅家:上郡町)】
 駅家の築地基礎と側溝を確認。
 古大内式軒瓦、北宿式軒瓦、鬼瓦などが出土。

 調査報告書Ⅳ(分布調査・駅家関連資料紹介)はこちら(奈良文化財研究所HP)

 調査報告書Ⅴはこちら(奈良文化財研究所HP)

※調査にあたっては「古代官道調査委員会」を設置し、以下の委員の先生方にご指導いただきました。

 山中敏史(奈良文化財研究所)考古学(1期~2期)
 馬場基(奈良文化財研究所)文献史学(1期~4期)
 木元雅康(長崎外国語大学)歴史地理学(1期~4期)
 坂井秀弥(奈良大学)考古学(2期~3期)
 玉田芳英(奈良文化財研究所)考古学(3期~4期)
 菱田哲郎(京都府立大学)考古学(4期)